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作り手の「手」を追って

interview 06/秩父元気プロモーション(埼玉県秩父市)

「秩父元気プロモーション」の役割と想い。

埼玉県秩父市。6月のある日、福島の中心部から直線距離で約240キロ離れた地で開催されたのは、阿武隈地域で作り食べ継がれる伝承料理の調理実習。会場となる一軒の古民家に到着すると、微かにですが厨房の賑わいが風に乗って聞こえてきます。

 

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 この日、調理を行うのは、秩父農工科学高校の生徒によって設立された模擬会社「秩父元気プロモーション」の皆さん。社会実践的な活動を通じて自らが秩父の広告塔となることで、地域の取り組みをより活発にすることを目的として設立されました。
 その取り組みは、秩父の特産品であるサツマイモの栽培と商品化や、学校の農業科で栽培された野菜を販売するための卸売り機能また、地元の鉄道会社との駅弁の共同開発まで。模擬会社といっても活動内容は大人顔負けです。

 

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福島から秩父への「食文化の疎開」。

 取り組みを初めて4年目を迎える秩父元気プロモーションと福島との繋がりが始まったのは、震災がきっかけでした。
 「被災地に対して農業を通じてできることはないだろうか?」そんな思いから、この団体の顧問でもある秩父農工の今井先生は、福島へのスタディツアーを企画しました。生徒一人一人が自分の目で現場を見て、自分の足で福島の地を踏みしめる。こうした中でかーちゃんの力・プロジェクトとの出会いがあったのです。
 阿武隈地域伝統の食文化である「凍み文化」を象徴するのは、凍み大根や凍み豆腐、そして凍み餅といったもの。いずれも食材を外に晒すことで風や気温変化や風によって水分が飛び、美味しさだけが凝縮されしかも保存が効く。こうした知恵を守り続けるには、福島の環境では難しい状況にありました。
 そこで、学生さんたちが提案したのが食文化の疎開。
 栽培や加工・調理技術を持ったかーちゃん方が、秩父の地に出向いて技術伝承を行い、学生さんたちがそれを作り受け継ぐすることで、大切な食文化を守り作り食べ継いでいこうというものです。
 こうして始まった、あぶくまの伝承料理継承プロジェクト。生徒さん自らが作った凍み大根を初めとして、「じゅね」やクルミが並び味噌じゃが用の甘い味噌の香りに包まれた厨房は、まるで福島の大きな農家の台所がそのまま移動してきたかのようです。

 

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 こうした空間でプロジェクト会長の渡邊さんと永沢さんの指導の元、次々と料理が作られていきます。かつて、農家のお嫁さんは、嫁ぎ先のお母さんから時に厳しい姿勢で食卓に関するイロハを教わりましたが、ここでは昔ながらの技法はコミュニケーションの手段となり、和気あいあいとした空気の中でイロハが受け継がれています。
 一方、調理の過程や出来上がった料理をスマホのカメラで撮影したり、ソーシャルメディアにアップする姿が。そこには、20世紀までに育まれてきた食文化の普遍性と、21世紀のコミュニケーションが融合する理想的な姿がありました。

 

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自分で考えて動く、台所のしごと。

秩父元気プロモーションは、男女合わせて現在12名。皆さん高校3年生なのですが、自分がこの年令だった頃は…と反省することばかりです。家政学科の方もいらっしゃるので、調理の過程で「これは落し蓋すれば大丈夫ですか?」といったやりとりも。
 全ての料理に関する普遍的なものを基礎技能として消化し、伝承料理にしっかりと適応させる。もちろん、普遍的なものなのでそれが正解なのですが、学ぶことに受け身に構えてしまうと、以外に自分からはこうした提案ができないもの。疑問をそのままに置いておくのではなく、積極的に問いかける。簡単そうに見えて意外にできないことです。
 料理が次々と出来上がる中で、手の空いている学生さんの姿はなく、お皿を洗ったり片付けたり。みんなで一つの食卓を作りあげています。

 

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賑わいは、距離と世代を超えて伝承される。

 完成した料理を生徒さんが囲む姿は、まるで自宅にお孫さんが遊びに来たような空間。料理が世代と地域の架け橋になることで、食文化の普遍性は受け継がれていく。福島でもこうした時間が色々な場所で生まれていたはず。
 こうした料理が一緒に作られる時間がもっとあって欲しい。そう願うばかりです。

 

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